ミュージックマシーン


■NONA REEVES 西寺郷太インタビュー
■7枚目のオリジナルアルバム「SWEET REACTION」がついにリリース。
■喜びと悲しみ、ハッピーでメロウ、すべての感情を詰め込んで回るディスクをキャッチして、この夏の思い出のページをめくれ! ノーナ最高!

PROFILE
NONA REEVES(ノーナ・リーヴス)
西寺郷太(Vo)、奥田健介(G)、小松茂(Dr)の3人組。
1996年に1stアルバム「SIDECAR」、1997年に2ndアルバム「QUICKLY」をアンダーフラワーレコードよりリリース。そのメロディと洗練されたアレンジメントで、外資系ショップを中心に注目を集め、1997年11月にワーナーミュージック・ジャパンからメジャーデビュー。
3rdアルバム「ANIMATION」、4thアルバム「FRIDAY NIGHT」を経て、筒美京平プロデュースのシングル「LOVE TOGETHER」がスマッシュヒットを記録。日本のポップバンドとしては稀有な、80年代ディスコやソウルミュージックを思わせるサウンドで人気を確立しつつ、YOU THE ROCK★とコラボレートしたシングル「DJ!DJ!〜とどかぬ想い〜」や5thアルバム「DESTINY」でさらにファン層を広げる。
その後レコード会社を日本コロムビアに移籍し、2002年9月、バンド名をタイトルに冠した6thアルバム「NONA REEVES」(通称:ノーナのノーナ)を発売。
そして2003年7月、ニューシングル「CHANGIN'」と7枚目のオリジナルアルバム「SWEET REACTION」をリリース。
ちなみにバンド名の由来はマーヴィン・ゲイの娘(ノーナ)と女性ソウルシンガーのマーサ・リーヴスから。

 

 

■「FRIDAY NIGHT」はそれまでの「ANIMATION」的なことをぜんぶふっきってやりたかったんです。

――今回のアルバムまでの流れをちょっと振り返ってみたいんですけど、よく考えるとここまでの流れってすごくきれいですよね。メジャーデビュー前に「SIDECAR」と「QUICKLY」っていう、男の子が集まってバンドではじめて音出してみた、っていう甘酸っぱい時期があって。

そう、レコーディングもはじめてで、お金もなくてっていう時期。

――で、「ANIMATION」はそこまでの集大成みたいな感じですよね。

だからあの「ANIMATION」っていうのがメジャーのデビューアルバムなわけですよ。それまでの「SIDECAR」とか「QUICKLY」だと「お金はこれだけしかかけられない」みたいな限定があったんだけど、それを全部とっちゃって作ったはじめてのアルバムなんですよ。それこそストリングスでバイオリンの人を10人、ビオラの人を5人とか並べて作れるなんて、昔はまったく想像してなかったから。だって自分が作った曲に40人くらいおじさんが来てドーンって演奏してくれるっていうのは、もう「これ夢にまで見てたプロの世界じゃん!(笑)」って状況で。もう想像の領域ですよ。普通にバンドやってる大学生とかはギターとかベースしか見たことないわけで、それが「ANIMATION」でストリングスも使えます、トランペットも入れられます、ってなったときにそれはやっぱりやってみたいじゃないですか。

――はいはい。

だからあの「ANIMATION」ってアルバムは、良くも悪くもなんでもやってみたいっていうのが出すぎてるところがあって、いま思えばプロデューサーも冨田恵一さんとか、何曲か関わってもらってるんだけど、トータルではやっぱり奥田、小松、俺っていう3人でやれたんで、舞い上がってたってとこはありますよね。スタジオでバイオリンの人が音出ししてたりするのって、もうビデオで観てたビートルズのレコーディングみたいな感じなんですよ。だから「ANIMATION」が出たあとで、自分の中でそこを戒める、みたいな感覚はありましたね。ちょっと手を広げすぎてわかりにくいとこがあったなって。なんかいろんな部屋のあるお城を借りてみたけど、使ってんのは自分の部屋だけとか、そういう感じだったんじゃないですかね。

――それで「FRIDAY NIGHT」を作るわけですよね。あのアルバムでノーナは気合い入れてガーンといったと思うんです。でもぼくが感じたのは、ガーンといったんだけど、気持ちが先走ってて、どこかカラダがついてきてないみたいな感じがあったんじゃないかと。

わかります。まだあんときは24歳とかだったし。でもそういう意味では「FRIDAY NIGHT」は俺の中では転機というか、いろいろ考えたアルバムなんですよね。

――「ANIMATION」から一転して、シャキっとコンパクトになった印象がありますけど。

うん、曲数も減ったし、ブルーアイドソウルが好きだった自分っていうのがよく出てますね。ホール&オーツとかスタカンとかワム!とか、そういう黒人じゃない人がやってるソウルみたいな感じが出ればいいな、と思って、歌詞もぜんぶ日本語にしてやったんで、だから「FRIDAY NIGHT」は、ノーナ・リーヴスをすごく好きって言ってくれる人は「いちばん好き」って言ってくれたりすることが多くて、自分としてもあのときからはじまったなっていう感覚はあります。それまではいい意味も含めて、子供だったっていうかね、音楽好きな子供が作ったアルバムだった。で、「FRIDAY NIGHT」「BAD GIRL」以降はやっぱり大人のアルバムになったと思います。なんかそんな気がして。だから俺のなかではあれはすごく大事なアルバムだし、あれがあったからずっと続けれられてる。たぶん「ANIMATION」のままでは無理だったと思うんですよね。

――ぼくもずっと聴いてていちばんショックだったのは「FRIDAY NIGHT」だったし(先行シングルの)「BAD GIRL」でしたね。でも「BAD GIRL」はぼくのノーナの好きな曲ベスト3に入りますよ。

あの曲は、人気投票みたいのがあったとしたら上位なんじゃないですかね。以前「DESTINY」のときかな、俺がどっかでトークイベントしたときに、アンケートの裏に好きな曲3曲書いてくれって言ったら「BAD GIRL」がいちばんでしたね。

――おお。

まぁまだ「I LOVE YOUR SOUL」とかないころでしたけど。だからやっぱりピリッとしてますよ、あそこからは。とくに「BAD GIRL」からはベースが千ヶ崎(学)に代わったっていうのもあるし。それまでは小山(晃一)とやってたんで。

――ぼくはあのときの変化を戦略的なものだと思ってたんですよ。だからノーナがもっともっとわかりやすく受け入れられるためにあれをやったっていうふうに思ってて。

いや、もちろんそれはありますよ。それは毎回思ってるし。もともと「THRILLER」とか「PURPLE RAIN」とかが好きな人間なので。売れたいなっていうのは常にもちろんあるんだけど。ただ、それよりももっと「こうしないとダメだな」っていうのが自分のなかであるんですよ。やりながら「このままではいけないな」って思うときと、「これだったらまだしばらくいける」って思うその境目みたいのがあるんですよ。

――どういうことですか?

例えばね、小学校終わって中学校に行くじゃないですか。で、中学だと4つくらいの小学校の生徒が混じって1つの中学に入りますよね。そのときに4月とかはまだもとの小学校の友達と仲良くしてるんだけど、でもしばらくすると「あれ、こいつのほうが話あうんじゃねぇか」って思うような別の小学校から来た友達に会ったりしますよね。音楽の趣味がやけにあったりとか。そのときに小学校のときの友達を捨てるとかじゃないんだけど、こっちのほうがいいや、みたいな感じありますよね。

――はい。

でもたまに女の子とかでよくいるんだけど、小学校のときの先生に中学の帰りに会いに行ったりするやついるじゃないですか。

――いますね(笑)。

俺もそんな感じで、小学校のときによくしてくれた先生のところに行ったことがあるんですよ。中学の夏休みかなんかに誰かに誘われて。それでちょうど俺も声変わりとかしてて、先生に「おっさんみたいな声になったな」とか言われて、楽しいんですけど、そんときに「あ、俺もうここに来ちゃダメだな」って思ったんですよ。確かにその先生はいい先生だったけど、だからって月イチとかで会いに行ってたら、それはやっぱりよくないと。それは中学から高校行くときも同じだし。大学行くときはまた県も変わったりしてぜんぜん違うし。

――そうですね。

でもそのときにかえって「小学校のときのアイツってすっげーいいやつだったな」とか思うわけですよ。大学行ってから小学校のときの友達とひさしぶりに会って「飲み行こうぜ」とか、そういう関係ってなんかいいじゃないですか。だから音楽も同じで、なんかこう、自分がいまやりたいこととかやるべきことがあるんであれば、その気持ちに忠実にならなきゃいけない。そこで前やってた音楽にこだわってると、いまやろうとしていることのビビッドさっていうのがなくなっていくんじゃないかっていう、そういう思いがあって。
だから「FRIDAY NIGHT」のときはそれまでの「ANIMATION」的なことをぜんぶふっきってやりたかったんですよ。でもだからって「SIDECAR」をなかったことにしてほしいとか思ったことは一度もないし、「QUICKLY」とかすごくいいアルバムだなって思うし。「ANIMATION」も違うベクトルで同じように思っていて、これはこのときしかできなかったものなんです。だから1回1回が記念写真みたいなもので、これよく言うんだけど、アルバムってホントに写真のアルバムみたいなものなんですよ。
中1のときの自分なんて再現できるわけないじゃないですか。いま俺が子供のときの服着てもしょうがないわけで。だから1歳ずつ歳はとるし、音楽やってて得るものも失くすものもあるんですけど、でもいつも今回のがいちばんいいなって思えてるんですよ。だからそういう意味では、その意識を切り替えて作るやり方はホントによかったなって思いますよ。この7枚目もフレッシュな気分で作れてるから、ただそれだけでもありがたい。いますごくいい気分ですよ。


■ノーナのアルバムっていうのは「FRIDAY NIGHT」的なアルバムと「DESTINY」的なアルバムが交互にきてる気がするんです。

――とくに今回のアルバムはフレッシュだと思います。「FRIDAY NIGHT」以降、「DESTINY」も「NONA REEVES(ノーナのノーナ)」も、前のアルバムをベースにして、クオリティが上がっていくというか、ある意味チャレンジがあったと思うんです。でも今回はそういう意識からふっ切れてる感じがするんですよ。

そうですね。だから小学校、中学校、高校、大学って、やっぱり背も伸びていくし、大人になる過程なんですよね。でもある程度背が伸びて大人になったら、もう3歳4歳の違いなんて変わらないんですよ。で、ノーナもそれと同じで、いままではなにか変わんなきゃいけないとか、1cmでも背が伸びてなきゃいけないとかそういう意識があって、特に前回の「ノーナのノーナ」っていうのはホントそういった意味では気迫があるアルバムだと思うんですね。
これよく考えるんだけど、自分のなかでノーナのアルバムっていうのは「FRIDAY NIGHT」的なアルバムと「DESTINY」的なアルバムが交互にきてる気がするんですよ。だから「SIDECAR」ってやっぱりはじめての喜びにあふれてて、「QUICKLY」ってもうちょっとパーソナルじゃないですか。ちょっと悲しみがあるっていうか。で、「ANIMATION」はドーンとひらけてて「FRIDAY NIGHT」はもうちょっとパーソナル。

――コアですよね。

うん、自分の心のこのへん(胸をぎゅっと指す)で歌ってる。それで「DESTINIY」っていうのは「LOVE TOGETHER」とかも入ってていろんな意味でひらけてて、わりと収拾ついてないとこもあるかもしれない。「ノーナのノーナ」はすっごい胸のど真ん中で歌ってたと思うんですよ、俺の気持ちとしては。
で、今回の「SWEET REACTION」はまたちょっとひらけてるアルバムだと思う。なおかつ今回は物理的なグレードアップとかじゃなくて、同じ家なんだけどもっと心地よく住みたいとか、車もデカけりゃいいってわけじゃなくて、自分のちょうどいいサイズでいちばん気持ちよく乗りたいとか、そういうホントの意味で余裕が出てると思うんです。前回よりも詰めてるとこはもっともっと詰めてるんだけど、でも「SIDECAR」とかがもってた、普通に音楽が好きで楽しんでやってるってとこもよく出てる気がして。

――うん、それはすごく感じます。リラックスして聴けるんですよね。だからいま思うと「ノーナのノーナ」は好きだけど、ちょっと緊張するとこがあって。「ENJOYEE!」とかも、あれはサウンド的にはある意味完成形だなぁと思うけど、やっぱり気負いがあるというか。

わかりますよ。だから今回のシングルに「ENJOYEE!」のライブバージョンを入れたんですけど、実は「ENJOYEE!(YOUR LIFETIME)」っていう曲は自分でもまだよくわかってなくって、答えが出てない曲なんですよ。だからさっき言ったみたいに、あの曲は絶対作らなきゃいけないと思ってやってたんですよ。俺の気持ちの中でね。こういう風に作ることを自分の中で1回トライしないとなんか気持ち悪いと思って。
「LOVE TOGETHER」以降は、ノーナの曲のなかにもやっぱ歌謡曲的な要素っていうのがガンガン入ってきて、それはもしかしたら「BAD GIRL」からだったのかもしれないけど、そういう歌謡曲的な要素って自分の中には子供のころから絶対あるんですよね。でも例えば昔で言うと「FREAKY」とか「YOUTHLESS」とかってあんまり関係ないじゃないですか、歌謡曲とか日本の音楽なんかとは。

――そうですね。

例えば「GOLF」とか。完全にプリンスが好きだったり、外人の子供が感じてる音楽の感じ方みたいなものが出てる曲だと思うんです。

――洋楽好きの男の子が集まって楽器鳴らしたらああいう風になりました、って感じですよね。無邪気だし。

そうそう、そういう意味では「FORTY PIES」とかも無邪気だし、欲がない感じなんですよ。もちろんあの曲とかもぜんぜん古びてないと思うんだけど、あの頃は日本がどうこうとか、そんなことぜんぜん考えずに作ってたんですよ。でもしばらくして、自分が日本で音楽やってるうちに、そういう歌謡曲的な要素っていうのはやっぱりあるだろうと。普通に街で暮らして音楽聴いてきたんだから。確かにレコード買った数でいったら、ほとんどアメリカやイギリスのポップミュージックなんだけど、やっぱり日本の音楽っていうのも自分の中にぜんぜんあるじゃんって。そう考えたら、小学校のとき少年隊好きだったよなぁとか、そんなことを思い出してきて。だったらそういう部分ももっと正直に出していいんじゃないのって思いはじめて。まぁ少年隊に詞を書かしてもらったり会ったりして俺んなかで盛り上がってきたっていうのもあるんですけど、自分のなかのそういう部分に向き合って作ってもいいんじゃないのっていう、そういう意識で作ったのが「ENJOYEE!」だったんですね。だからかえって音もえらいチープにしてみたりとか。あの曲は、いままでナシにしてたことをぜんぶアリにしてみようと思って作った曲なんです。でもレコーディングしてリリースされてるバージョンを聴くと、ちょっと気負いすぎてるところもあって、俺が思ってる「ENJOYEE!」のぜんぶが入ってない気がしたんです。えーと、あの曲自体はちょっとヘンな曲じゃないですか。

――はい。

もちろん俺はすごい曲だとは思ってるんですけど、レコーディングしたバージョンとライブでやってるバージョンと2つを足してあの曲のヘンな不気味さというか不思議な感じが出ると思うんです。たぶんあの曲をそんな「めちゃめちゃ好きです!」っていう人もいないかもしんないけど、でも「キライっていうのもなんか違うなぁ」っていう感じで。

――ひっかかるんですよね。

そう、ひっかかる。なんか気持ち悪い曲だと思うんですよ。だから俺は作者だけど、まだあの曲のストーリーというか「ENJOYEE!」自体は続いてると思ってて、なんか2年とか3年とか5年とか経ってから、自分でも「あー、こういうことだったのか」ってわかる日が来るのかなって気が「ENJOYEE!」に関しては思うし、またなんか今回の「SWEET REACTION」でやったみたいなものと「ENJOYEE!」みたいなものがもっと自然にくっついたときにすげー曲ができるんじゃないかって思ってて、だからあれをアウトにしてるだけじゃなくて、オーケーって言えるノーナになったからこそ、今回の「SWEET REACTION」みたいなアルバムができたのかなって。そういう意味ではやってよかったなってすごく思ってるんですけどね。


■確かに歌謡曲っていうのはクソみたいな音楽の割合がほかに比べると多いかもしれないんだけど(笑)。

――その歌謡曲的なものを自分のなかでオーケーにしたっていうのは、筒美京平さんとの出会いっていうのも影響してるんですか。

んー、だからやっぱり誰も20歳くらいのときに、自分で歌謡曲的な要素を織り込んだ曲を作ろうとは思わないし、作れないですよね。やっぱパンクとか、例えば俺だったらソウル的なものとか、そういうのを作るのは簡単だとおもうんですよ。でも歌謡曲っていうのはある意味すごく複雑なものだし。なんていうかブレンド具合が大人っていうか、ちょっと遠くでものを見ないとできない音楽だと思うので。やっぱりああいう音楽を作るっていうのは職人的な割り切りも必要だし、テクニックがないとできないと思うんですよね。で、それをやれないうちはやらなくてよかったんですけど、やれるとなったときにやらないのはヘンだなっていう気持ちになったんです。
だからあれですよ、例えば高校生のときに野球部のやつはみんな坊主じゃないですか。で、野球部辞めたあと、なんかヘンな長髪にするでしょ。

――(笑)。

パーマあててみたり(笑)。「坊主のほうが似合ってたんじゃねぇか」ってくらいのやつも、1回髪伸ばしてみたいから、ずっとほっといてロンゲにしたりするんだけど「おまえ絶対髪の毛短いほうが似合ってる」って感じになっちゃって。で、1年くらいして、ちょっとしゃきっとした柳葉敏郎みたいな髪になってやっと落ち着くんですよ。わかります?

――わかりますわかります(笑)。

もちろん長い髪が似合うやつもいるんですよ。でも似合ってなくても、それまでやれなかったから、やれるとなったら喜んでやっちゃうってとこがあるじゃないですか。だから「ENJOYEE!」とか「HISTORY」に関しては、自分のなかで、メンバー含めてスキルがあがって、そういう音楽の作り方もやれるようになったから、じゃあ1回100%やってみようよってとこでやった曲なんです。そうやって一度歌謡曲的なものにチャレンジしてみて、とりあえずできたわけですよ。で、できることがわかったから、今回は逆にやらなくてもいいと思ったってとこはありますね。

――なるほど。それにしても郷太さんの歌謡曲の捉え方っておもしろいですよね。普通は歌謡曲っていったら、日本的なベタなメロディみたいなものをイメージすると思うんですけど、そうじゃなくって職人的な、大人が作る音楽っていうイメージが強いんですね。

そうですね。だから「ENJOYEE!」が歌謡曲っぽいっていうけど、あれを英語でやったらまたヘンな曲だったと思うんですよ。もともとは英語でやってたんですけど、そんときはホントにマイケルみたいな曲というか、クインシー・ジョーンズの「愛のコリーダ」みたいな歌で。ほら、実はかえって洋楽のジャズっぽいグループのほうがベタな、いわゆる歌謡曲っぽさを持ってたりするでしょ。例えばワム!の「CARELESS WHISPER」とか歌謡曲じゃないですか。サウンドとしてはぜんぜん違うんだけど、ああいうのを俺んなかでは意識したんですよ。ワム!も好きだし。だからそういう歌謡感ですよね。ていうか、歌謡曲と歌謡曲以外のものっていうのをもし分けたとしたら、日本語でやってるのはぜんぶ歌謡曲だと思うんですよ。日本人の歌っていう意味でね。だから「FORTY PIES」とか、今回だったら「NARCISSUS」とか「数学教師」とかは歌謡曲じゃないと思うんですよ。

――それは単純に言葉っていうことで?

言葉の違いがいちばんデカいと思いますね。結局フランス語でやってるからフレンチポップスだと思うんですよ。フランス人がやってても英語でやってる曲は普通のポップスですよ。そこにフランスのエレガントさが入ってるとかそういうのはそりゃあるかもしれないけど、普通に聴くと普通のポップスですよ。イングリッシュポップスっていうかアメリカンポップスっていうか。
やっぱり言葉ってすごく強いから。自分たちは日本人だからわかんないけど、たぶん日本のポップスも日本語でやってる時点でその国の音楽になってると思うんです。日本語でやってればそれは日本の歌謡曲だと思います。
ただパンクやディスコやオルタナやソウルのなかにもクソみたいな音楽がいっぱいあるように、歌謡曲のなかにもクソみたいな音楽はいっぱいあって、そんなものを作りたいと思ってるわけではまったくなくて、確かに歌謡曲っていうのはクソみたいな音楽の割合がほかに比べると多いかもしれないんだけど(笑)、でもやっぱり日本の素晴らしい曲っていうのはいっぱいあって、俺が言ってる歌謡曲っていうのはそういう意味で使ってますね。

――そういう意識っていうのは昔からあったんですか。「MOTORMAN」とか「PUT A LITTLE LOVE IN YOUR HEART」なんかも歌詞は日本語ですけど。

うーん、「MOTORMAN」はちょっとはあったかもなぁ。でも「LITTLE LOVE」とかは…、それもあったのかなぁ。

――確かに「LITTLE LOVE」が日本語の歌かっていうと…。

そうでもない気がしますからね。だからあのへんは基本的に言葉をただ単に記号として使ってるから。今回で言ったら「JEFF」とかもそうだと思うんですけど、別に俺は日本語でなにかを訴えようとか、どういうメッセージを、とかそういうのじゃないですからね。「CHANGIN'」なんかも、まぁ「CHANGIN'(変われ)」っていうメッセージはあるんですけど、それも言葉をひとつの意味として伝えようっていうのはそんなにないですね。「DJ!DJ!」とかもそうだし。まぁ「HISTORY」とか「SERIOUS LOVE」なんかはこれ聴いて喜んでくれたらいいなっていうのはちょっとはありますけど。

――歌詞に関しては、それ単体でなにかを伝えようというよりは、曲になったときの全体のイメージを重視しているってことですか。

うん、アップテンポの曲に関しても、受け取る側がすっごく落ち込んでるときに聴くと、悲しい曲に聴こえるようにはしてあるんですよね。で、すっごい元気なときに聴くと元気に聴こえたりとか。例えば赤と青が半分ずつ色分けされてるボールがあって、そのボールをコロコロって転がすと、紫色に見えるみたいな、そんな歌詞を書きたいって思ってるんですよ。パーツとしては、悲しい部分もあったり前向きな部分もあったり、わかりやすいくらいのポジティブシンキングみたいな部分もあるんだけど、でも歌としてリズムといっしょに転がったときに、何色かって一言で言えないようなそういう曲にしときたいんですよ。俺が好きな曲っていうのはそういう部分があるし。だからやっぱそういう意味では、聴いてる側が勝手に想像を膨らませられるような余地っていうのは残しておきたいと思いますね。

――そのいまのボールの例えって歌詞だけのことじゃないですよね。

うん、音楽的にぜんぶそうですね。だからポップミュージックっていうのは何年経っても繰り返して聴けるものだと思うんです。その色の混じり具合、赤とオレンジでも黄色と緑でもなんでもいいんですけど、その転がり具合もあって、ゆっくり回るとひとつひとつ見えたりするし、速く回るとわけわかんなくなっちゃったりとか。それが1個のボールじゃなくて3つくらいのボールが同時に回っててもいいし、そこで「何色ですか」って聞かれたときに「いや、うまく言えないんだけどこんな感じ」っていうのがあるわけで。それが例えばドラムだったりベースだったりギターだったりコーラスだったり、歌詞だったりストリングスだったりホーンだったり、またはクラッシュ音だったり、それが組み合わさることによって曲ってできてるから、しかもそこに自分っていうボールも組み合わさるんですよ。例えばものすごい二日酔いして気持ち悪いときに聴いたら、こっちが同じように回ってても違うふうに受け取れるわけだし。結婚する前日に「HISTORY」を聴いたりすればまたぜんぜん違うふうに聴こえると思うんです。だからその組み合わせは日によって違うし、さっきの中学高校大学の話でもそうだし、こうやってしゃべってる間にも一秒一秒変わるしね。たぶんタクヤくんにしても、俺とこうやってしゃべる前と、しゃべったあとだとノーナを聴くときの気持ちも違うかもしれないし。だからもしかしたら会わないほうがよかったかもしれなくて、直接話を聞いちゃって「こんなふうに思ってたのか」って残念に感じるかもしれなくて。だからもし俺がジョージ・マイケルやマイケル・ジャクソンと仲良くなっちゃったとして、なんかマイケルから毎日電話かかってくるようになったらどうする?って話ですよ。

――(笑)。

それまでグッズとか必死で集めてた自分がいたら、なんだよって思うこともあるかもしれない。でもそれはしょうがなくって。かえっていいこともあるし。だから俺もこうしてミュージシャンやってて、ほかのいろんなミュージシャンの人と会って、ノーナ・リーヴスのこと好きですよって言ってもらえたり、あなたの音楽をリスペクトしてますってこっちから言ったり、たいていの好きなミュージシャンとはコンタクトとれたりして、そういうコミュニケーションっていうのはだんだん増えていくわけで。それが残念な部分もあるし、最高って思える部分もあるし。ノーナの音楽はそういう音楽であってほしいんですよね。毎回同じ、マークシートの答みたいなわかりやすい音楽じゃなくてね。


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