ミュージックマシーン


■Theピーズ 大木温之インタビュー
■もう惑わないはず(?)の40歳直前に、ギリギリの傑作ロックンロールアルバム「赤羽39」が完成。その制作過程を根掘り葉掘り!

 

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  ■アビさんが空気を伝える音にこだわるからね

――実はこれぼくの思い出話なんですけど、昔12年くらい前に一度はるさんと話をしたことがあるんですよ。ぼくは当時札幌に住んでて、ピーズが札幌のベッシーホールにライブやりに来て。

ああ、行ったね、青森とか札幌とか行ったな。

――アルバムでいうと「とどめをハデにくれ」が出たあとくらい。はるさんがライブのあとなぜか外で酔っぱらってたんで、思い切って話しかけたんです。

「とどめ」のときはあー、ウガンダ(※Theピーズの2代目ドラマー)がいちばん調子悪かったときだ。

――「とどめをハデにくれ」というアルバムには「とどめをハデにくれ」(※次作アルバム「どこへも帰らない」に収録)が入ってないですよね。ぼくはそれが不思議で仕方なくて、はるさんに「どうして入ってないんですか?」と聞いてみたんです。そしたらはるさんは「ウガンダがうまく叩けなくて、ギリギリまでやったんだけど結局録れなかったんだよね」と教えてくれまして。

ああ、思い出してきた。あのころね。あのツアーで俺ホントにウガンダを追いつめちゃってさ、タムとかも使わせなかったんだよ。

――え?

ドラムセットからタムをとっぱらっちゃって「スネアだけでノリ作るように」って言って鍛えようとしてたんだよね。相当いじめたよなあ。

――ぼくはそれまでピーズってバンドは、そんなに音を追究するバンドじゃないのかと思っていた節があったんですが、そのときのはるさんの発言で目が覚めました。

ああ、俺もゼロから心意気でロックンロールなんかできるもんだと思って、ウガンダとはじめたけど、んー、2、3年でやっぱダメなもんはダメだって思った。悪いことをした。

――はたから見てるとウガンダさん、いろんなオカズも叩けるようになってて、どんどんうまくなってるように見えてたから意外だったんですよね。

なんかね、あの頃は音がどんどんこもってくるように感じた。俺もアビさんも同じように感じてた。どこでそんなこと覚えてきたんだかわかんないけど、ウガンダの音が曇ってきちゃったんだよね。

――ぼくはそんなことわからないから「え、ウガンダさんうまくなってるじゃないですか」って言ったんです。そしたらはるさんに「俺がベース弾いてるんだよ? 俺がいちばんわかるんだよ?」って言われて「なるほど」と。

ははは、なんで俺、街角のあんちゃんにそこまでしゃべってんだろうな(笑)。

――(笑) ぼくはそのときから「音楽雑誌の人は歌詞のことばっかり語るけど、やっぱりみんな音がかっこいいから好きなんだよなあ」と強く思うようになりました。

そうなのよ。そういうライターの人もいないと困るんだよね(笑)。

――あと、これもみんなあんまり言わないけど、ピーズはレコーディングがうまいバンドでもあると思うんです。録音された音がかっこよくていつも驚かされるんですが、なにか秘訣はあるんでしょうか?

比べたことないけど、音はよそのバンドのほうが今っぽくてかっこいいんじゃないの? ピーズは音こもってんなあと思うよ。

――いや、ライブのかっこよさがレコードでもよく出ていると思います。

まあアビさんが空気を伝える音にこだわるからね。失敗するとこもっちゃうんだけど、うまくいくといい音だよね。薄っぺらい音ではないと思う。やっぱりギターとエンジニアのこだわりじゃねえのかな。ドラムもいいスタジオで録らしてもらってるし。俺は音のことはわかんねえな。ベースなんてラインで録ればいいんだもん。

――じゃあはるさんのこだわりというよりは、アビさんなりシンイチロウさんなりのこだわりが活きているということですか?

んー、だからエンジニアの人をね、そういうちょっと古くさい感じの音がわかる人に頼んでるからね。マスタリングとかも今っぽい音の人に当たっちゃうとぜんぜん違ってきちゃう。そういうのはもうぜんぶボツだよね。前回それでやり直してずいぶん損してるんだよ。なんか違うんだよ。ペターっとしたコンプ? よくわかんないけど音が殺されちゃうんだよ。向こうは聴きやすくしてくれてるんだろうけど、俺らにとってはダメ。

――やっぱり1stアルバムあたりはいま聴くと音が軽いですよね。

ドンシャリ時代だったもんな。それにあの頃はレコーディング自体はじめてだったから「あれ?」って思いながらもこれが自分たちの音なんだろうなって。はじめて電話から聞こえてくる自分の声を聞いたみたいな感じ。30何曲一気に録ってたし。ちゃっちゃとやってただけ。

――変化が訪れたのは2ndアルバムからですか?

2枚目でドラムの音録るときに「ちょっとマイクの位置変えてみましょうか」って言われてやってみて、そしたら劇的に音が変わってガレージっぽくなって。「レコーディングおもしろいな」って思いはじめたのはそれが最初かな。

――なるほど、そこから試行錯誤が。

泥臭い方向にどんどん進んでいって、結局こもってて聴きづらいレコードもあったけど、最近はそのへんはなんとなく落ち着いてきたのかな。俺はもっと聴きづらいのもありだと思うし、アビさんもそうだけどね。「この曲はギターしか聴こえません」みたいなそういう冒険はまだしてないからね。

――アビさんは自作のアンプを持ち込んで自分で音を作ってるわけですよね。

たいへんだよね。音が決まるまで時間かかるし。

――その間ははるさんは何をしてるんですか?

レコーディングのときはぐったりしてる。

――(笑)。

でもライブのときは困るよね。リハでどうやって時間つぶそうかなって。ふと次の曲いこうとしたらアビさんいないんだもん。なんかドリルみたいなの持ってアンプの裏側を懐中電灯で照らしてるしさ。

――でもアビさんが作った音が、はるさんにとっても気持ちいい音なんですよね?

そうだねえ、リバーブとか、3年くらい前はね、アビさんギターのリバーブもっと深かったの。それが最近薄めになってきたから、きっとギターのプレイにだんだん自信がでてきたんじゃないかな(笑)。ブランクを通り越して。でもまあ注文はないですね。何も思い残すことなく、その日その日のライブをこなせてくれたらいいなと思う。

――では、いまのメンバー構成は非常にいい感じということですね。

やっぱいままでさんざんメンバー変わってきたから。もうああいうツライのはやだからね。でもけっこうみんな忙しいからさ、バンドだけで、ピーズだけでってわけにもいかないから、せめてね、ピーズやるときは元気でプレイできれてばいいんだけどね。もう注文もなんもないからさ、メンバーはよっぽどのことがない限りは変わらない。昔は、若いときは女を取り合ったりとかでメンバーチェンジしてるバンドもあったんだろうけど、そんなこともないしね。

――この3人でずっと続けていってくれるなら、ファンとしては嬉しい限りです。

俺としては何の不満もないよ。ただもうちょっと楽させてあげられるつもりだったんだけど、アビさんとかしんちゃんはスケジュールやっぱきついな。ドカンとかいかねえしな。

――ドカンって?

ブレイク。なんか細々となりつつあるよな。残念だ。

――でもいまさら売れないから辞めるとか、そんなこともないですよね?

いやあ、男としてそんなこと言っちゃいけないよね。言えねえよ(笑)。俺が曲をぜんぜん作らなくなったら、もうバンドは終わりだっていうときも来るかもしれないけど、いまんとこはここまでは来れたってことでね。先のことはわかんない。

――40歳になって続いてるんだからまだまだ続くんじゃないですか。

わかんないね。次のネタもなんもないしね俺。またネタ探しの旅。曲がないとただの酔っぱらいだからな。もう抜け殻よ。

――全国ツアーもありますが、体力的にはどんなもんでしょうか。

なんか作戦練るよ。うまいこと乗り切らねば。でもあれでしょ、レコード屋さんのキャンペーンとかもこれが最後でしょ。これからレコードもアルバム単位で曲作ったりとかもなくなるんだろうし。

――え、そんなことはないでしょう?

なんかパソコンでさ、1曲ずつダウンロードしたりとか。

――いや、ピーズはまだまだアルバム出してくださいよ。

もう聴かれ方とかよくわかんないもんな。着うたとか? 自分が着うたとか使ったことないしさ。

――いや、ピーズはそんなの気にしなくて大丈夫ですって!(笑)


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